研究概要 |
抗組織血清の催奇形機序に自己免疫過程が関与しているか調べる目的で, ラットの5週令から抗ラット心臓ウサギ血清(AHS)または抗ラット腎臓血清(AKS)を感作し, それぞれに対する抗体の生じたものに12週令で妊娠させ, さらに器官形成期の妊娠9日にAHSまたはAKSを投与するという新しい方法で, 奇形発生につき検討した. 対照には無処理ウサギ血清(NRS)を用いた. 結果は次のとおりであった. 1.呼吸率および奇形発生率 (1)AHS+AHS群(5週令よりAHS感作後, 妊娠9日にAHS投与);29.5%および31.5%. (2)AHS+NRS群(AHS感作後, NRS投与);15.3%, 6.0%. (3)NRS+AHS群(NRS感作後, AHS投与);13.1%, 3.8%. (4)NRS+NRS群(NRS感作後, NRS投与);11.8%, 4.8%. (5)AKS+AHS群(AKS感作後, AHS投与);31.0%, 33.3%. (6)AHS+AKS群(AHS感作後, AKS投与);34.3%, 35.8%. 以上より, AHS+AHS, AKS+AHS, AHS+AKSの3群が対照群に比し有意に高率であった. 2.奇形内容 AHS+AHS, AKS+AHS, AHS+AKSの3群で小眼球, 心室中隔欠損, 水頭症, 全身浮腫, 大動脈弓異常, 肺動脈狭窄などが対照群に比し高率にみられた. 3.抗核抗体 母体血につて蛍光抗体法で調べたが陽性例はなかった. 4.房室ブロックIII度 21日胎仔の心電図で認められたものはなかった. 5.投与抗血清の組織内沈着 AHS+AHS群で母体心筋にラットIgG, C_3の沈着を認めた. 6.組織所見 胎仔および母体心に心筋炎や心内膜炎所見を認めなかった. 以上より, 本実験の催奇形機序は自己免疫過程でなく, 過去の成績との類似性よりyolk sac機能不全が示唆された.
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