研究概要 |
新生児, 未熟児の消化菅の成長発達に母乳栄養が重要な意義を有する可能性を検討するため, 本研究を行った. ヒトの初乳(11例), 移行乳(9例), 成熟乳(13例)でEpidermal growth factorを測定し, 初乳に高濃度に含まれる事, そしてヒト体液中で初乳中濃度は尿中濃度とともに, 最も高値を示し, EGFの作用を考慮するとこれが新生児未熟児の腸菅の成長発達に, 有意義に働いている可能性があること, 示唆された. そして動物実験で(雑種)仔犬を, 新生児群, 母乳栄養群(4日間), 人工栄養群(4日間)の3群に分けて, 各群n=5の例数で次の測定を行って検討した. 〈測定および検索項目〉 1.胃, 12指腸, 小腸, および大腸の長さ, wet weightの測定 2.下記物質の腸粘膜内濃度の測定: a.lactaseおよびsucrase b.alkaline phosphatase c.蛋白質 d.DNA e.電顕的に小腸微織毛の観察 〈結 果〉 1.12指腸+小腸の長さおよびwet weightは, 新生児と母乳栄養群の比較で有意に母乳栄養群が大であったが, 人工栄養と新生児, あるいは人工栄養群と母乳栄養群の比較では, 有意差は認めなかった. 2.母乳栄養群の小腸蛋白質およびDNA含量, AIK phosphatase活性は新生児群に比し有意に高値であったが, 新生児および人工栄養群間に差はなかった. 3.lactaseおよびsucrase活性の各群間比較で, 有意差は認められなかった. 4.微織毛は母乳群で最も長かった. 〈結 論〉 新生児早期の仔犬に認められた小腸組織の成長促進は, 母乳特に初乳に含まれるEGF等の成長発育因子が関与しているものと考えられた.
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