研究概要 |
1.ヒト赤血球溶血を指標とした酸化障害解析のモデル系 ヒト赤血球を界面活性剤添加緩衝液に浮遊させ, 触媒を用いて溶血を惹起させるモデル系を確立した. 坑酸化酵素であるスーパーオキサイドディスムターゼやカタラーゼの阻害剤で処理した赤血球はより脆弱であることから, スーパーオキサイドと過酸化水素から生成される活性酸素種が原因物質と推定された. 本溶血系は血清蛋白の添加により阻害されることから, 血清の坑酸化能を, また病的赤血球の溶血パターンから赤血球の酸化剤に対する抵抗性を, それぞれ検索することが可能であり, 臨床的にも大いに利用できる. 2.慢性腎不全患者の未梢血好中球の過酸化水素産生能と貪食能 同症患者は細菌に対して易感染性を示すことが多い. 患者の未梢血好中球の過酸化水素産生能と貪食能をフローサイトメトリーを用いて検索したところ, 透析前には共に低下し, 透析により正常値に回復, また透析前に低下というサイクルを示した. この異常は好中球自体に在るのではなく阻害的に作用する血清中の阻害因子によるものと考えられた. 3.全血による好中球貪食能と過酸化水素産生能の同時測定法. 従来好中球諸機能を検査するには, 多量の血液から好中球を分離する必要があったが, 本法により少量の血液(100μl)で好中球の酸素代謝能の測定がさらに容易となった. 4.新生児好中球走化能・付着能におけるFc受容体表現の異質性 新生児好中球と成人好中球をそれぞれ2つの亜群に分類し, 上記機能をしらべたところ差が見られ, この差が新生児の細菌に対する易感染性の一因となるものと考えられた. 本法を用いてそれぞれの亜群の酸素代謝能を検索する予定である.
|