研究概要 |
アトピー皮膚炎の急性, 亜急性および慢性湿疹病巣, さらに本症患者におけるDNCBその他の抗原によるアレルギー性接触性皮膚炎病巣を生検した. これらの病巣の浸潤リンパ球サブセット, ランゲルハンス細胞の分布をモノクローナル抗体, 酵素抗体法によって検索し, 下記の成績を得た. 1.アトピー皮膚炎の急性, 亜急性および慢性湿疹病巣の浸潤リンパ球は一貫してT細胞性であるが, 浸潤T細胞サブセットは皮疹の経過とともにかなり変動することが明らかになった. 急性の湿疹病巣ではヘルパーT細胞が圧倒的に優位であり, ヘルパーT対サプレッサーT比は平均10.9に達した. ところが, 皮疹の慢性化とともにサプレッサーT細胞がゆっくりと増加し, 慢性湿疹病巣におけるヘルパーT対サプレッサーT比の平均値は3.5に低下した. したがって, 本症病変部にみられるサプレッサーT細胞の減少は恒常的なものではないと思われる. 2.アトピー皮膚炎患者に生じたアレルギー性接触性皮膚炎病巣の免疫組織学的所見(浸潤T細胞のヘルパーT対サプレッサーT比, ランゲルハンス細胞の分布)は健常人に生じたアレルギー性接触性皮膚炎の場合とほぼ同じであることが判明した. 3.ただし, 浸潤T細胞のヘルパーT対サプレッサーT比は, 皮疹のphaseに関係なく, アトピー皮膚炎病巣では接触性皮膚炎病巣に比べてかなり高いことが明らかになった. 4.以上をまとめると, アトピー皮膚炎の病巣ではサプレッサーT細胞数がかなり減少している. しかし, 皮疹の慢性化とともにサプレッサーT細胞数が増加して来る. この2つのデータから, 本症病変におけるサプレッサーT細胞の動態は, アレルギー性接触性皮膚炎病変の場合と本質的に同じであると考えられる.
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