研究概要 |
ランゲルハンス細胞は, 表皮に分布する抗原提示細胞であるが, 種々の物理的あるいは化学的刺激によって傷害をこうむる. とくに, 紫外線照射によって傷害を受け, 免疫学的な機能がおかされることが近年になって明らかにされてきた. しかし, その傷害機構は不明であった. われわれは, すでに表皮角化細胞の紫外線傷害に活性酸素が関与することを報告した. 今回, ランゲルハンス細胞も同様の機序によって紫外線傷害を受けるか否かを知る目的で実験を行った. ハートレイ系白色モルモット皮膚に中波長紫外線(UVB<320nm)を照射(0.9〜2.7Joule/cm^2)すると, 表皮ランゲルハンス細胞が傷害され, ATPasc陽性のランゲルハンス細胞の数が20〜25%に減少した. しかし, 紫外線照射前にsuperoxide dismutase(SOD)を照射部位に皮内注射したモルモットでは, ランゲルハンス細胞の傷害が抑制された. catalase,D-mannitol,L-histidine等の他の活性酸素消去剤には防御効果がみられなかった. 逆に, SODの不活性剤であるdiethyldithiocarbamateを投与すると紫外線傷害が増強された. 次いでin vitroの実験系で検討を加えた. 切除したマウスの耳介から表皮シートを作製し, RPMI1640培地に浮遊させてUVBを照射した. 培地中にSODを添加した場合には, UVBによるATPase陽性ランゲルハンス細胞の減少が抑制された. 照射後にSODを添加した場合, あるいは熱処理によって不活性化したSODには防御効果が認められなかった. 以上の結果から, 紫外線が照射されると皮膚においてO_2^-あるいはそれに派生する活性酸素が産生され, ランゲルハンス細胞の膜構造を損傷する可能性が強く示唆された.
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