研究概要 |
ロイコトリエン(LT)はアラキドン酸より合成され, そのうちLTB4は強力な白血球遊走作用により, またLTC_4, LTD_4は強力な血管透過作用, 平滑筋収縮作用により皮膚においても蕁麻疹をはじめとして種々の皮膚疾患の成立に関係しているといわれている. 私達はまずマウス皮膚においてリポキシゲナーゼ活性を検討した. マウス皮膚のアラキドン酸のリポキシゲナーゼによる主たる反応生成物は12-HETEであり, 15-HETEも少量認められたが, 5-HETEはきわめて少量であった. この反応系に5μMのAA861を添加するとこれらの生成は抑制された. また500mJ/cm^2の中波長紫外線を照射すると24時間後には, マウス皮膚の12-HETEの生成は約2倍増加したが, これは真皮に浸潤してきた好中球由来の可能性も考えられた. ついでマウスの耳にアラキドン酸を塗布し, 誘発された炎症反応を耳の腫脹を計測することによって定量化し, マウスの耳LT量もラジオイムノアッセイにて測定し, 種々のビタミンA誘導体(レチノイド)を投与したマウスについてそれらの薬物のアラキドン酸による炎症への影響を検討した. アラキドン酸塗布による耳の腫脹は, レチノイド投与群において著明に抑制された. またLTB4およびペプチドーLTは, アラキドン酸を塗布することにより, 著明に上昇し, レチノイド投与により抑制された. 免疫組織学的に皮膚におけるLTB4の局在も検討したが, 抗体価の低さ, 固定の困難さ等により, 意味のある結果を得ることができなかった. ついで皮膚疾患とLTとの関連を調べるため, アトピー性皮膚炎患者の末梢血中の多核球のLTB4産生能を検討した. しかし成人の末梢PMNのA23187によるLTB4産生は, 正常人とアトピー性皮膚炎患者に有意の差は認められなかった. このように皮膚においてLTの合成・機能, 局在を研究することはその含有量が極めて少量のため困難なことであるが, 今後より高度な分析法を用いて検討を続けていきたいと考えている.
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