研究概要 |
目的:黒色腫治療を熱中性子捕捉療法で治療するには2つの重要条件を克服しなければならない. 第一はガンマー線と速中性子線が極めて少ない熱中性子源であり, 第二は熱中性子捕獲断面積の大きい元素, 即ち^<10>Bの腫瘍細胞内への線量的集積で, 周辺正常組織に比べ数倍の高濃度取り込みが必要である. 従って研究代表者は, S61年度より2年間にわたる研究の目的を, 黒色腫の代謝活性を利用し, ^<10>B_1-paraboronaphenylalanineを黒色腫細胞及び腫瘍組織内に従来の方法よりもさらに選択的に腫瘍細胞内に集積させる条件の追求においた. 結果:(1)^3H-チロシンは^<10>B_1paraboronaphenylalanine(^<10>B_1-BPA)の濃度に相関してB-16黒色腫細胞内取り込みが減じた. (2)Lineweaver-Burle plot解析で非競合阻害を示した. (3)B-16及びヒト黒色腫の両細胞系で, フェニールアラニンとチロシン不含条件で^<10>B_1-BPAを添加しpre-incubationすると熱中性子照射による細胞致死が増大した(Do値が低下). (4)アルカリ溶融法で, B-16黒色腫内への^<10>B_1-BPA集積性を, 通常MEMとチロシン及びフェニールアラニン欠乏MEM(D-MEM)で比較すると, D-MEMで約4倍の高い集積を示した. (5)^<10>B_1-BPAの培養細胞内集積性は6〜12時間のインクベートと2週間のインクベートで差はなかった. (6)黒色腫担癌ハムスターをフェニールアラニンとチロシン欠乏食で12日間飼育後, 20mgの^<10>B_1-BPAを腫瘍内投与し, ^<10>Bの腫瘍内集積性を通常食群と比較すると, 1.2〜2.4倍と有意に高い取り込みを示した. 結論:^<10>B_1-BPAがひと黒色腫細胞にもよく集積することが実験的に確認された. さらに, D-MEMでより^<10>B_1-BPAのより高い集積性がin vitro及び実験動物モデルで明らかにされた. 従って, ひと黒色腫の治療に当たり, ^<10>B_1-BPAを熱中性子照射の6〜12時間前に投与し, さらに, チロシンとフェニールアラニン欠乏食がより良い原料であると結論できる.
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