研究概要 |
昨年度に引続いて実際の患者さんより採取したリンパ球をソースとして細胞融合法によるヒトーヒトハイブリドーマを作製した. 親細胞は昨年度使用したLICR-LON-HMy2を継続した使用した. その結果, いくつかの興味あるヒト型モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製に成功したが, 腫瘍特異抗体は得られなかった. 尋常性天疱瘡患者の末梢血リンパ球をソースとした細胞融合では, 表皮細胞間を染色する, ハイブリドーマクローン#32-7が得られた. しかし, この抗体は性状新生児マウスに大量投与しても棘融解現象を誘導できず, 天疱瘡抗原とは異なるものを認識しているものと推察された. また, 同じ細胞融合で得られた別の抗体#32-8は, 脂腺および角層を特異的に認識した. 水疱性類天疱瘡患者の末梢血リンパ球をソースとした細胞融合では, 外毛根鞘最内層細胞層とのみ反応する抗体#35-1が得られた. これらはいずれも原疾患の発生病理と恐らくは関係の無い自己抗体と考えられる. しかし, このような抗体を産生するハイブリドーマが作製されたことは, 今まで知られている以上に各種皮膚疾患において自己抗体が出現している可能性を示唆する所見といえよう. 本年度はこれ以外にもメラノーマ患者のリンパ球を用いた細胞融合を施行したが, 有用な抗体を得ることはできなかった. 今後, 腫瘍特異抗体を得るためには融合効率の向上と, in vitroでの特異抗体産生B細胞の選択的刺激・増殖誘導などの方法論的な見直しも必要と考えられる.
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