研究概要 |
薬剤性光線過敏症は、光増感剤である薬剤が光照射をうけることによって光化学反応を種々の標的分子との間におこすことにより発症する。チアジド系利尿剤の光毒性反応の発症において、脂質が標的分子となり得るか否かにつき検討した。 1.チアジド系利尿剤存在下長波長紫外線(UVA)照射による脂質酸化能の検討:ペンフルチド(PFZ)はハイドロクロロチアジド,メチクロチアジド,ベンジルハイドロクロロチアジド,トリクロロメチアジドに比べ、不飽和脂質の酸化能が高く、スクワレン過酸化物(過酸化脂質)をUVA照射量に依存して生成した。 2.ペンフルケド光増感脂質酸化能にたいする-重項酸素の関与:PFZ存在下UVA照射によるスクワレン過酸化物の生成量は、一重項酸素のクエンチャーであるアジ化ナトリウム、2.5-ジメチルフランの添加により抑利される一方、重水中では軽水中に比べ亢進した。PFZ光増感脂質酸化は一重項酸素を介した酸素酸化(Type【II】)であることが明らかとなった。 3.PFZ光増感脂質酸化の生体膜にたいする効果:赤血球浮遊液中にPFZ添加、UVA照射すると、膜脂質の酸化を伴った溶血が生じた。この光増感溶血はアジ化ナトリウムの添加により抑制され、ハイドロキシパーオキシド、スーパーオキサイドアニオンラジカルのクエンチャー添加では抑制されなかった。すなわち、一重項酸素を介した膜脂質の障害が明らかとなった。生体膜もPFZ光毒性反応の標的となることが示唆された。
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