研究概要 |
1.細胞内グルタチオンの放射線効果における作用機序に関する研究: 物理化学的ターゲットラジカル反応における細胞内グルタチオン(GSH)と酸素との拮抗モデルを提出した. 本モデルがDUAレベルの実験結果を満足することを確認した. 本モデルを用いた計算機シミュレーションにより, 細胞内GSH, 酸素および低酸素細胞放射線増感剤misonidazole(MISO)の反応係数を求め, それぞれ0.02, 10.0, 0.4の値を得た. 2.低酸素細胞放射線増感剤に関する研究: C3H/HeマウスのNFSa腫瘍を用いて, 放射線照射によるGSH合成阻害剤buthionine sulfoximine(BSO)とMISOの併用効果を調べた. 低酸素細胞を含むNFSa腫瘍では, BSOを併用することにより, MISOの放射線増感効果を更に高め, その併用効果は相乗的であることを確認した. 例えば, 0.5mmol/kgのMISOの増感率は1.44であるが, 5mmole/kgのBSOを照射前6時間間隔で4回併用することにより, 1.93の増感率を得られる. 3.正常組織に関する研究: BSO5mmol/kg投与後のC3H/Heマウスの種々臓器のGSH量の変化を高速液体クロマトグラフィー法で測定した. 特に肝, 膵, 腎臓内のGSH量は投与後10時間までに約20%まで減少, 約20時間後には正常値に回復した. ICRマウス下肢の皮膚反応を指標にして, 正常組織の放射線照射によるBSOとMISOの併用効果を調べた. 低酸素状態の皮膚に対して, BSOとMISOの放射線照射における併用効果は相乗的であった. 一方, 空気吸収下における下肢皮膚には低酸素状態の細胞が部分的に存在することを確認した. 4.グルタチオン研究の総括: グルタチオンの研究を総括して, 時に放射線効果におけるグルタチオン効果の総説を報告した.
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