研究概要 |
薬物治療中の精神分裂病患者60名(薬物維持療法中42名, 急性期薬物治療中18名)を対象にBPRSを用いて症状評価し, さらに同患者より採血して得られた血漿の抗ドーパミン(DA), 抗ノルアドレナリン(NA), 抗セロトニン(5HT)力価をラジオセレプターアッセイ(RRA)を用いて測定し, 臨床症状や治療効果, 患者背景などとの関連性を検討した. 各RRAの^3H-ligand, 置換物質, レセプター標本は以下のとおりである. DA受容体:1nM ^3H-(-)-sulpiride, 100nM haloperidol(HPD), ラット線条体, NA受容体:0.2nM ^3H-prazosin, 200nM prazosin, ラット前頭皮質, 5HT受容体:1nM ^3H-ketanserine, 500nM pipamperone, ラット前頭皮質. 抗DA力価はHPD等量(HPD-E ng/ml)およびクロールプロマジン等量(CPZ-E ng/ml)で, 抗NA力価及び抗5HT力価はCPZ-E ng/mlで求めた. 結果をまとめると, まず薬物維持治療法中42名では, (1)抗DA力価は大多数の患者(69.1%)で10HPD-E ng/ml, 100CPZ-E ng/ml以下の低力価で維持されていた. (2)発病後経過年数が長くなるほど, 抗DA, 抗NA, 抗5HTいずれの力価も高値を示した. (3)さらに, 1日薬物投与量(HPD換算量), BPRSとの陰性症状得点も発病経過年数が長くなるほど大きくなっていた. 次に急性薬物治療中の18名では, (1)18名中15名(約80%)がHPDに良好に反応し, 残り3名は, HPDは無効で他剤に変更して症状改善した. (2)抗DA力価はHDA換算量, ラジオイムノアッセイで得られた血中HPD濃度と正の相関がみられた. (3)抗DA力価約80%の殆どの患者で15HPD-E ng/ml, 150CPZ-E ng/ml以下に集中していた. (4)治療効果と最も関連性が高かったのは抗NA力価であり, 抗DA力価と治療効果には関連性がみられなかったが, この抗NA力価への効果への寄与は抗DA力価存在下において発揮するものと考えられた.
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