研究概要 |
維持療法中の分裂病者を対象にラジオレセプターアッセイを用いて抗精神病薬の血中での薬理作用強度(血中力価)ドーパミン受容体遮断強度(抗D-2力価), ノルアドレナリン受容体遮断強度(抗α1-NA力価)およびセロトニン受容体遮断強度(抗5HT-2力価)に分けて測定し, 治療経過および副作用との関連を検討した. 得られた結果は以下のとうりである. 1.抗精神病薬の薬理作用のなかでは抗D-2作用が再燃防止効果と最も関連しており, したがって血中力価のなかでは血中抗D-2力価を維持量の指標とするのが最適と考えられた. 2.治療等価量での血中抗D-2力価は抗精神病薬の種類によって異なっていたことから, 血中抗D-2力価を維持量の指標とした場合, その有効濃度は抗精神病薬の種類によって異なることが示唆された. 3.維持療法中の分裂病者81例のなかで治療経過が安定していた58例の血中抗D-2力価(平均値±標準偏差)を再燃防止の有効濃度とみなすと, thioridazineのそれは55-24ng/ml(濃度はhaloperidol等価量で表示), 以下clocapramine;31-19ng/ml, sulpiride;33-11ng/ml, propericiazine;35-5ng/ml, levomepromazine;18-9ng/ml, pimozide;13-6ng/ml, chlorpromazine;14-4ng/ml, haloperidol;7-3ng/mlとなった. 今回示した有効濃度を81例の患者に適用し, 有効濃度にありながら再燃したものと有効濃度以下で再燃したものを比較すると, 再燃率は後者で有意に高く, 維持量の指標として有用と考えられた. 4.全体としてみれば, 各血中力価の上昇に伴って副作用の頻度も増加したが, 副作用の出現には種々の薬理作用が関連していると考えられ, これらの血中力価を総合的に評価する必要があるものと考えられた.
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