研究概要 |
クロイツフエルト・ヤコブ病(CJD)は痴呆を主症状とする変性疾患の一つであるが発病機序は全く不明である。感染説の立場からSAFあるいはプリオンと呼ばれるアミロイド様タンパクを含む画分と発症因子との関連が示唆されているが、実体は明らかでない。本研究は感染説にとらわれることなく、広く発症機序解明のため発症因子の部分精製と発症能の分布について検索を行った。 1.発症因子画分の部分精製は基本的にはDiringerらの方法に準じた。ヒトCJD由来の発症マウス脳(大脳と小脳)9.3gを用い、10%サルコシル処理、遠心(22,000×g,30分→215,000×g,2時間)、プロティナーゼK処理等を行って、最終的に脳ホモジネート(Hom)を10画分に分けた。2.10画分のタンパク成分を電気泳動で解析した。最終画分【P_(215)】s-aは分子量19,22,27Kの3つのバンドを示した。このバンドはニトロセルロース膜転写後、抗プリオンペプチド抗体と反応することより、いわゆるSAFあるいはプリオンタンパクに相当することがわかった。3.Homと10の亜画分をマウス脳に接種し、感染価を測定した。タンパク量1〜4μgのオーダーでは各画分とも130〜140日を最小潜伏期間とし、以後稀釈とともに潜伏期間が延長した。本研究は現時点ではまだ継続中であるが、接種タンパク量0.1〜0.4μgのオーダーでHom,E2,【P_(215)】s-a,【P_(215)】s-b画分に強い感染能が観察されており、発症率は100%である。即ち100pgのレベルではHomと3つの分画画分との間に発症能の差は見い出されなかった。 従来の研究では分子量27〜30Kタンパクを含む画分と発症能との間に強い相関が示唆されているが、本研究の結果は発症能が19〜27Kタンパクと必ずしも挙動をともにしないことを示唆するものである。
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