研究概要 |
甲状腺ホルモンに対して結合増大を示すアルブミン(ALB)バリアントの本態を明らかにするために, 異常ALBの性状を検討し, 最終的にその1次構造の異常を明らかにし, 臨床上の特徴を含めて, この病態を内科学及び臨床検査診断学上の新しい症候群として位置づけることを目的として実験を行った. 本研究は主としてトリヨードサイロニン(T_3)に結合増大を示すALBを対象として行った. T_3結合優位型ALBの臨床的特徴; 患者はeuthyroidであるが, 血中T_3濃度と遊離T_3指数の著明な上昇を示し, アナログ法のキットで測定した遊離T_3濃度は著明な(偽)高値を示し, 平衡透析法の結果解離をした. T_3結合優位型ALBの生化学的特徴; 精製した患者ALBは, ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)上で正常ALBとの間に荷重の差を認めず, SDS-PAGEでも易動度に差を認めなかった. 患者ALBのT_3対する親和恒数は約8倍増大していた. この増大したT_3結合は, barbitone,ANS,Cl-により抑制された. T_3結合優位型ALBにおけるALB-T_3結合; 精製したALBを^<125>I-T_3で標識し等電点電気泳動(IEF)を行った. 患者及び正常ALBとも基本的に8本のT^3結合バンドを示した. 内因性のリガンドを除去して出現するバンド, あるいは外因性にT^3をを添加して飽和されるバンドより, 患者ALBのT^3結合の増大は, 正常にも存在するT_3に対して親和性の高いALB成分が量的に多く存在することによるものと考えられた. 又, T_3に対して親和性の高い結合部位にはS-S結合が関与していることが明かになった. アフィニティラベリングによるALBのT_3結合部位の同定; ALBのT_3結合部位をBromoacetyl^<125>I-T_3を用いてアフィニティラベリングを試みた. 患者および正常ALB共, 時間依存性に共有結合されるBrAc^<125>I-T_3は増加していったが, この結合は非標識T_3により抑制がかからず, かえって増強された. ALBをBrAc^<125>I-T_3でアフィニティラベリングすることは不可能であった.
|