研究概要 |
我々が以前に発見した先天性TSH単独欠損症の遺伝子解析を行なった. 本症は, 近交係数1/64の近親婚両親から出生した姉妹例である. 患者及び両親からヘパリン加採血を行ない白血球から直接, あるいは一部をEBVirnsを用いて株化し, これをDNA供給源として解析した. 次に先に得ているTSHR遺伝子をプローブとして, Southevn blotを行なった. すなわち制限酵素としてECORI, HindIII, PvVIIなどを用い0.7%アガロースゲルで電気泳動し, DNAをニトロセルローズフィルター上に移し, α^<32>P標識のプローブ(32O塩基対)でハイブリダイズしたところ対照とした健常人と差がなかった. そこで患者DNAをBalIIで完全消化し, λL47BamHIarmを用いTSHβ遺伝子BglII4.4Kbpをクローニングした. その結果^<29>Gly(GGA)から^<29>Arg(AGA)への変異を見出した. この部位はCAGY領域と呼ばれ, すべての糖タンパクホルモンのβ鋭について種を超えてアミノ酸配列が保存され, 糖タンパクホルモン生合成に重要な役割りを果たしていると考えられる. そこでこの変異TSHβ(βM)または正常TSHβ(βN)と正常TSH・α(αN)のmRNAをXenopasOocyteにmicro-injectionしたところαN+βNでは正常のTSHが, 検出されたが, αN+βNでは検出されずこの変異がTSHの生合成に障害を与えたものと考えられる. 次にこの変異により新たにCTAGというMaeIによる切断部位が生じたため, この制御酵素を用いて, ヒトTSHβ遺伝子をプローブとしてSauthernblotを行なった結果患者姉妹では異常遺伝子がホモ接合体となっていることが, また両親ではヘテロ接合体であることが示された. さらに, 家族についても検索した結果, 本症に関する保因者診断と, 遺伝相談, さらに出生後の速やかな対応と予防処置も可能となった.
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