研究概要 |
インターロイキンー1(IL-1)は下垂体に直接作用しACTH分泌を刺激する作用がある. この現象の研究は免疫系と内分泌系との関連やACTHの分泌調節をより理解することになる. そこで我々は種々の精製IL-1や類似モノカインであるラット多核白血球由来のIL-1様因子の下垂体からのACTH分泌に及ぼす影響を検討した. ラットIL-1様因子はPreparation A, Bを用いたが活性はそれぞれ600U/ml, 10u/mlであり, 精製ヒトIL-1, 精製マウスIL-1αのそれはともに100u/mlであった. 標準的な分泌刺激としてrat.humanCRFを用いた. ラット下垂前葉と1例のクッシング病から細胞をdisperseし, カラム内に充填後潅流した. 本系にこれら因子を添加し, 流出液中のACTHをRIAで測定した. ラット下垂体前葉ではIL-1様因子Prep-Aはピーク形成性にACTHを増加したが, 基礎分泌には変化がなかった. Prep-BはACTHの基礎分泌を促進したがピーク形成はみられなかった. クッシング病の潅流系ではPrep.AによりACTH分泌のピークがみられたが基礎分泌は変化しなかった. 一方, Prep.BはACTHの基礎分泌だけを増加した. またラット下垂体では, ヒトIL-1によりACTH基礎分泌は増加し, ピークの形成もみられた. しかしながらマウスIL-1αの少量持続投与ではACTHが減少する傾向がみられた. またCRFとマウスIL-1αを繰り返し添加したが, 初回, CRF後のIL-1α添加では前半にはACTHがむしろ抑制され, 後半に増加する傾向がみられた. IL-1α投与後のCRFによるACTH増加は初回のCRFによる増加より大となる傾向があった. 以上から1)ラットIL-1様因子, ヒトIL-1には下垂体に直接作用してACTH分泌を増加させる作用があり, また, 2)マウスIL-1αはラット下垂体の潅流系においてACTH分泌増加のみならず, ある条件下では分泌抑制傾向を示した. したがって一般的にモノカインにはACTH分泌を増加するのみならずACTH分泌をmodulateする作用があると考えられた.
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