研究概要 |
1.ヒト甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)cDNAのシークエンスとTPOの一次構造:Graves病患者甲状腺から抽出したmRNAを用いλgt11をベクターとしてcDNAライブラリーを作製した。当初、計画通り抗体プローブによりライブラリーのスクリーニングを行ったが、非特異的結合の可能性を除去出来ないため、TPOのトリプシン分解物から4本のペプチドを分取し、そのアミノ酸配列から3種類の核酸プローブを作製し、スクリーニングを行った。最終的に3,048ヌクレオチドからなるcDNAを得た。これは933アミノ酸からなる分子量103,026daltonsの蛋白をコードすると考えられた。Asparagine-linked糖鎖付着可能部位は5ケ所存在した。 2.染色体mapping:ヒト-ハムスターおよびヒト-マウスhybrid cell linesから得たDNAを用いてTPOをコードする遺伝子の染色体上での位置を検討したところ、第2染色体短腕のcentromere近くと考えられた。 3.2種類のmRNAs:cDNAライブラリーのスクリーニングから2種類のcDNAが得られた。検討の結果、短いcDNAは5′側から605塩基対までは長いcDNAと一塩基対の違いを示すのみであるが、途中で171塩基対が欠除した。この171nucleotideは5′側にGT,3′側にAGの配列を持っており、スプライシングにより短いmRNAが出来た可能性が強い。171uncleotideは57アミノ酸からなるペプチド(6,282daltons)をコードしており、ヒトTPOが107/100Kdの2種類の蛋白からなる事実を明快に説明しそうである。
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