研究概要 |
造血器腫瘍細胞の染色体異常の有無を研究するためMethotrexate(MTX)による同調培養法とDNAに非特異的に結合するethidium bromide(EBr)による染色体凝集阻害法を併用して高精度染色体分析を行った. 対照としては骨髄直接法や24時間培養法を用いた. MTX(終末濃度10^<-7>モル)培養を17時間行った後のthymidine(終末濃度10^<-5>モル)添加の時間は症例によってかなり幅がみられたがprometaphaseやearly metaphaseを多く得る条件は4・1/4時間から5・3/4時間が適当と考えられた(サンプル量が多い時は両者の併用がよい). EBrの濃度は10.0μg/mlが適当であり, それより低いと染色体の凝集阻止が不十分で,逆に高いと染色体障害が生じた. prometaphaseやearly metaphaseが多くなると実際上は染色体の相互の重なりが多くなり, 分析が極めて困難になる. 染色体の大きいA群, B群では高度の分析能力が必要であった. D群〜G群ではサブバンドが多く得られ微細な異常が検出しやすくなった. しかし高精度分析法は対照と比べて若干分裂像の低下を認めた. 高精度分析法と対照法の比較が可能であった症例は33例である. その内訳はFAB分類でM1=4例, M2=10例, M3=5例, M4=6例, M5=1例, M6=1例, RAEB=3例, L2=3例である. 染色体異常の種類ではM2に認められた8;21転座は方法の如何に拘らず検出されたが, 症例によっては骨髄直接法より培養法の方が有意に異常率が高かった. M3で認められた15;17転座は全例で骨髄直接法より培養法の方が有意に異常率が高く, 症例によっては骨髄直接法では異常が検出されなかった. RAEBの5q-でも培養法で初めて検出可能例があった. 高精度分析法は日常的な方法としては煩雑でかつ高度の分析能力が要求される. しかし微細な染色体異常があると考えられる場合にはこのMTXとEBrの併用による高精度分析法は有用である.
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