研究概要 |
Pra-UKは一個のペプチド結合が開裂するとUKになりfibrin親和性を喪失する。従ってPro-UKのfibrin親和性発現に当ってPro-UKの立体構造上の特徴が反映されていると考えられた。そこでPro-UKをplasmin処理によりUKに活性化させた前後のサンプルについて円偏光二色性(CD)を基に解析を行ない、尿由来UK及びt-PAの結果と比較した。まずPro-UKのα-helix,β-structure及びrandom structureは各々16.5,30.6,53.0%であった。Pro-UKをplasmin処理によりUKに変換させた後では各々16.3,32.1及び51.5%で、これらの値は尿由来のUKの15.0,29.3及び55.6%と大差なかった。これに対してt-PAでは21.9,42.8及び35.2%でPro-UK及びUKとは明らかに異なっていた。以上のCDのデーターからPro-UKの特徴を明確に出来なかったので、次に核磁気共鳴(NMR)(400MHz,【^1H】-NMR,日本電子JEOL,JNM-GX400)によりPro-UKのplasminによる活性化前後でのスペクトラムを比較検討した。まずPro-UKをpH7.4で【^1H_2】Oを4.70ppmを基準とした場合、主要なスペクトラムは1.85,1.27,1.14,1.12,1.10,0.81,0.80,0.79,0.10及び-0.04ppmに認められた。更に小さなスペクトラムが4.35,4.34,4.10,4.08,3.85,3.78,2.93,2.13,2.00,1.38ppmに認められた。このようなスペクトラムを有するPro-UKをplasmin-Sepharoseを通してUKに活性化し、同様にしてNMRの解析を行なった処,3.83及び-0.04ppmのスペクトラムは20〜30倍高さが増加した。またその他2〜5倍の高さの増加が7.32,2.10,1.34,1.33,0.18ppmに認められた。また測定条件をpH7.4から9.0に変化させアミノ酸の側鎖のイオン化の影響を中心に解析した処、3.58,3.56,3.54及び3.53ppmのスペクトラムの高さが約20倍にも増加した。また5倍程度の高さの増加が1.27,1.26,1.12,1.10及び-0.04ppmに認められた。然しpH9.0でPro-UKを活性化させた前後でスペクトラムの高さを比較した処、増加の割合は、2〜6倍で軽度であった。以上の結果からPro-UKの立体構造はCDよりもNMRでUKとの差を著明に反映させており、この点にfibrin親和性発現機序が想定される。
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