研究概要 |
一代雑種F_1マウスに親マウスの免疫適格細胞を半致死量のX線照射後に移植すると典型的なGVH病が発症する. このGVH病の重症度と平行して血清中にはIL-3活性が検出できるようになる. IL-3活性の測定にはマウス胎児肝細胞を標的細胞としてエリスロポエチン無添加で形成される赤芽球コロニー形成能を指標とする方法とIL-3依存性の細胞株FDC-P2細胞の^3H-TaRとり込み量を測定する方法とを用いた. 両者の測定結果は必ずしも一致するものではなく, 後者のFDC-P2細胞を用いる方法では血清中に抑制因子の存在が示唆された. つまり既知のIL-3活性をもつWEHI-3細胞培養上清に種々の濃度のGVH-Dマウス血清を添加していくと^3H-TdRのとり込み量の低下が観察された. 次にGVH-Dに伴う感染症に関連してエンドトキシンがこの因子の産生に関与しているかをエンドトキシン無反応性のC3H/HeJマウスを用いて検討した. その結果C3/HeJにGVH-Dを惹起させるとやはり血清中にIL-3活性がみとめられた. これで生体内でもIL-3が検出されることが明白になったのがどの臓器がその産生に関与しているかを探るためGVH-Dマウスの各臓器をとりだし液体培養を行った. 骨髄, 脾, リンパ節の各細胞浮遊液の培養上清中にこの活性が検出された. さらにGVH-Dマウス血清中のIL-3が生体内でどのような造血作用を行うのか検討した. この場合混在するエリスロポエチンの影響をとり除く為, 多量症にしたGVH-Dマウスを作製しその血清を採取し, これを同系マウスに静注して骨髄, 脾における各造血前駆細胞の推移を観察した. 投与3日目に脾で明らかな前駆細胞の増加がみとめられ, 一方骨髄では変化はあまりみられなかった. 今回の研究でIL-3が生体内で造血に関与していることは明らかとなったが, その産生調節機構の詳細についてはIL-3cDNAを用いた分子生物学的検討を要するものと思われた.
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