研究概要 |
肝臓癌において腫瘍栓が門脈本幹に及ぶ場合は一般に根治手術の適応とみなされない. しかし, 肝癌の外科治療に於ける門脈腫瘍栓除去の合併施行が肝機能の著明な改善をもたらしうることも臨床的事実である. この腫瘍栓除去操作にともなう第一の問題点は, 遊離した癌細胞の肝内散布である. その対策としては, 血中癌細胞に対し抗癌剤を投与することだけでなく, 類洞内皮細胞への付着・定着を抑制することが考えられる. 今回の研究では, 肝転移形成能の強い癌細胞は内皮細胞への高い付着性を示す結果が得られたが, MMC,Adriacin,5FUといった常用される抗癌剤では, 癌細胞の内皮細胞への付着を抑制するどころか, むしろ促進することが判明した. これは, 抗癌剤の内皮細胞に対する作用によると考えられる. 一方, heparinは強い抑制効果を示した. これはheparin投与が肝転移を抑制する可能性を示唆するものである. またurokinaseは特に影響をおよぼさなかった. 第二の問題点は, 腫瘍栓除去部における閉塞性血栓形成である. 骨盤・下肢静脈血栓症に比べて門脈血栓症の報告は極めて少なく, 門脈の組織線溶活性が高いという結果もこれを裏づけるものであるが, 実験的血栓形成能に部位差はなかった. 従って, 門脈においても血栓に対する処置は検討すべきである. 今回tpssue plasmisogen actrvator,urokinaseの門脈内投与の有用性を支持する成績が得られたが, 陳旧血栓に対する取り込みの機序, urokinaseの肝機能障害に関しては, 尚一層の検討を要する.
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