研究概要 |
種々なる無縫合血管吻合法による人工血管移植法(アロンアルファA塗布のみ, アロンアルファA塗布兼生物学的接着剤, 低出力CO2レーザー光線兼生物学的接着剤)を試みた. 臨床応用が可能と判断された方法はアロンアルファA塗布による人工血管移植術であった. 以下, アロンアルファA塗布について報告する. 方法:長さ2cm, 内径5mmのExpanded polytetrafluoroethylene(EPTFE)グラフトを雑種成犬の腹部大動脈に移植した. まず, 中枢側において6-0ポリプロピレン糸を全周に均等間隔に4か所, 水平マットレス縫合を行った. 縫合糸を結紮せず, 宿主血管とEPTFEグラフトを完全に密着させアロンアルファAを全周に塗布した. 10分間放置した後, 血行を再開し, 吻合部からの出血なきことを確め, マットレス縫合糸を除去した. 結果:観察期間中(移植後12ヵ月)の開存率は72.7%(8/11)であった. 期間別開存率は移植後1ヵ月目100%(2/2), 3ヵ月目100%(3/3), 6ヵ月目0%(0/3), 12ヵ月目100%(3/3)であった. 閉塞原因は宿主血管とEPTFEグラフトの接着が不完全で, 内腔にアロンアルファAが侵入し, 血栓が形成されたものであった. 牽引試験では移植後1〜12ヵ月目で1500〜2400gであった. 吻合部仮性内膜は移植後1ヵ月目で吻合部を越えて人工血管へ進展し, 人工血管全内面が内皮細胞で被覆されることはなかった. 吻合部仮性内膜の厚さは移植後1, 3, 12ヵ月目でそれぞれ490μm, 200μm, 41μmと移植後の時間が長くなるにつれて薄くなった. 移植後12ヵ月目では吻合部は新生内皮細胞で被覆され, 移植人工血管内面は平滑であった. 結論:アロンアルファA塗布による人工血管移植法は臨床応用可能であった. しかし, 人工移植血管移植の成否は宿主血管と人工血管を確実に接着させることであり, 解決すべき問題が残った.
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