研究概要 |
腫瘍マーカーとしての血清フェリチン測定の意義につき, フェリチンのHおよびLサブユニットに対してモノクローナル抗体を作製し, 酵素免疫測定法を確立し検討した. ヒト骨格筋および肝よりフェリチンを分離精製しBalb/oマウスの復腔内に投与した. 免疫後, 常法にて脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞の融合を行った. スクリーニングの後, 抗フェリチンHおよびLサブユニット活性を有するモノクローナル抗体株9種を確立した. 得られたモノクローナル抗体より, 抗Hおよび抗L活性を示す高力価抗体株をそれぞれ選び, ELISA法にて血清フェリチン・サブユニット測定法を確立した. その測定法にて, 健常人および各種, 良, 悪性疾患患者血清を測定した. 血清Lサブユニット値は比較的高値を示し, 従来の測定法による血清フェリチン値と良好な相関を示した. 一方, 血清Hサブユニット値は全般的に低値を示し, 従来の測定法値とは相関を示さなかった. 健常者の血清測定値より, Lサブユニット420ng/ml, Hサブユニット2ng/mlの正常値を得た. その値より求めた, 各種疾患での陽性率は, 良性疾患では, Hサブユニットにて肝胆道系, 胃潰瘍で高率を示した. Lサブユニットでは, 肝胆道系で高率であった. 悪性疾患では, Hサブユニットにて, 肝胆道系, 甲状腺, 肺, 消化器系悪性腫瘍で高率であり, Lサブユニットでは, 肝胆道系癌, 大腸癌で高率であった. 各種疾患での診断率は, Hサブユニットで, 甲状腺癌および肺癌において優れ, Lサブユニットで, 胆道癌, 大腸癌, 転移性肺癌において優れていた. 胃癌の進行度との関連は, Hサブユニットでは認めなかったが, Lサブユニットでは, 切断不能進行癌と切除可能進行癌との間に差を認めた. 血清HおよびLサブユニットの測定は腫瘍マーカーとして有用であると思われる. また, 両サブユニットの同時測定も有用と思われる. 今後, 症例数を増やし検討したい.
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