研究概要 |
HLA抗原型と腎移植成績との相関はクラス【I】抗原系よりもクラス【II】抗原系の方が大きく、更に血清学により定義されているクラス【II】抗原型であるDR抗原型、DQ抗原型よりも混合リンパ球培養反応(MLC)により定義されるD抗原型の方が相関が大きい。しかしD抗原型を決定するMLC反応はその手技が複雑なため、実際の腎移植ではDR抗原型が指標として用いられてきた。一方このHLAクラス【II】領域内にはDR,DR【II】,DQ,DPなど偽遺伝子などを含めると15個以上の遺伝子が存在することがわかってきた。そこで我々はまずHLA-D抗原型と遺伝子上の多型との相関をサザンブロット法により解析した。用いたクラス【I】,クラス【II】及びその周辺遺伝子座由来の10種のプローブの内、D抗原型と最もよい相関を示したのはDQβ須cDNAプローブであった。当初もう一方の最有力侯補と考えられたDRβ須cDNAプローブは検出し得る遺伝的多型がD抗原型よりも更に粗く、本研究の目的には不適当であった。DQβ須cDNAプローブと5種の制限酵素を用いたサザンブロット法により既知の19種のD抗原型をすべて区別することができた。このHLA抗原型のDNAタイピング法はその手技もさほど複雑ではなく、要する時間も比較的短時間で済むという利点がある。今回我々の確立したDNAタイピング法は移植腎提供者と受容者間のマッチングに新たな有力な方法を提供したことになると考える。 一方、本法確立の過程で我々は同一D抗原型内に更に遺伝子上の多型が存在することを見いだした。つまり、DW4抗原型内には4型のそれぞれ違った遺伝子型が存在していた。このような本法によってのみ検出可能な遺伝的多型はDW2,DW8,DW10,DW15,DW17内にも見られた。現在までの段階ではこの新たな遺伝的多型と腎移植成績との相関がD抗原型との相関よりも高いのかどうかは不明である。
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