研究概要 |
脾自己移植の感染免疫と腫瘍免疫に対する効果を明らかにする目的で, まず感染予防にもっとも有効な移植部位, および移植量の検討を行った. つぎに再生した移植脾(再生脾)のマクロファージ(Mφ)とリンパ球の機能と数さらに胆癌ラットにおける再生脾の機能を検討した. (1)脾の移植部位の検討:SD系(SPF)ラット(6週令・雄)を用い, 偽手術群, 脾摘群, 大網内移植群, 腹壁筋層内移植群の5群に分け, 摘出脾全体の約50%を移植し, 4ケ月後に6型肺炎球菌に対する感染予防効果を検討した. 血中からの肺炎球菌クリアランス, 生存率の結果から, 移植部位としては大網内がもっとも有効である事が判明した. (2)脾の移植量の検討:SD系(SPF)ラット(6週令・雄)の大網内にそれぞれ20〜30mg,50〜60mg,100mg,200mg,300mgと異なった脾組織量を移植し, 4ケ月後に肺炎球菌に対する感染予防効果および再生脾組織量を検討した. 血中からの肺炎球菌クリアランス, 生存率, 再生脾組織量の結果から, 感染予防効果を得るためには, 少なくとも, もとの脾組織の約50%が必要であることが判明した. (3)再生脾のMφおよびリンパ球の機能と数に関する検討:SD系(SPF)ラットを偽手術群と脾自己移植群に分け移植群では摘出脾全体の約50%を大網内に移植し, 4ケ月目に実験に使用した. 再生脾Mφのchemiluminescence. 肺炎球菌貧食能は対照脾に比較して有意差はなく, IL-1活性は有意に低下した. 再生脾リンパ球のblastformationは対照脾に比較して有意差がなく, IL-2活性は有意に低下した. (4)胆癌生体における再生脾の機能:WBN/Kob(SPF)ラットを用い, 偽手術腫瘍移植群, 脾自己移植腫瘍移植群, 偽手術群, 脾自己移植群に分け, 腫瘍移植群はMNNG誘発ラット胃癌細胞を皮下に移植し, 2週目および1ケ月目に実験に使用した. 腫瘍移植群の再生脾のNK活性およびIL-2活性は対照群の再生脾に比較して有意差はみられなかった.
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