研究概要 |
前年度の研究に引き継き, デヒドロコール酸の代謝産物についての測定法を確立し, 更に内部標準物質を加える事により, GC-MSを用いて高い精度で定量する事が可能となった. (その一部は, Chem, Pharm, Bul).に速報として発表した. 投与されたデヒドロコール酸は, 肝において還元, 抱合を受け, 胆汁中に分泌される. 生体に由来する, 所謂内因性胆汁酸と区別するため, 24-14Cコール酸を入手し, ジョーンズ酸化により標識デヒドロコール酸の合成を行なった. この標識体を閉塞性黄疸作製ラット及び対照ラットに投与し 胆汁を経時的に採取した. 投与後3時間で 対照ラットにおいて約90%の標識体が回収されたのに対し 黄疸ラットでは著しく回収率が低下した. また, 7及び12位のケト基の還元率も黄疸ラットでは低下し, 閉塞性黄疸解除後という病態下において デヒドロコール酸の肝における代謝及び輸送は低下する事が示された. 非標識体を用いた実験では, 投与量と閉塞の期間を変化させ検討した. 胆汁量は 黄疸群において対照群より高く, またデヒドロコール酸に対する反応もより大きかった. 総胆汁酸分泌量は 胆管閉塞により明らかに低下し, 閉塞期間が長くなる程低下の度合が強かった. 他の胆汁脂質であるコレステロール, リン脂質もほぼ同様の傾向を示した. 以上より 閉塞性黄疸解除後の病態下では デヒドロコール酸の代謝, 輸送のみならず 胆汁成分すなわち, 胆汁流量, 内因性胆汁酸等の胆汁脂質の分泌も阻害され しかも閉塞期間の長さによってより強くなる事が 実験的に確認された. この事は 採取された胆汁成分の分析によって 肝機能障害の判定を行い得る可能性のある事を示唆している.
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