研究概要 |
昭和61年度の研究で, 門脈遮断時におりる門脈・大腿静脈バイパスのバイパス流量の差による腸管循環に及ぼす影響について実験を行い, (1)バイパス流量は門脈流量の10%あれば, 門脈遮断による腸管循環に対する影響は, 単純遮断に比しかなり軽減されるが, (2)2時間の門脈遮断に対しこのバイパスの限界条件となるバイパス量は30%前後であり, (3)2時間以上の門脈遮断を循環動態及び腸管循環への影響を無視して安全に行うには50%以上のバイパス流量を確保する必要があることを明らかにした. このことを前提に昭和62年度は次の2つの実験を行った. 1)門脈遮断時における門脈・大腿静脈バイパスのバイパス流量の差による肝に及ぼす影響について 〔方法〕雑種成犬を用い, 門脈遮断を2時間行い, 同時に門脈-肝内門脈60%バイパスした群, 門脈-体循環60%バイパスした群, 門脈-体循環10%バイパスした群を作製し, 肝組織adenine nucleotidesや代謝性変化, 生化学的な変化について検討した. 〔結果〕門脈のみの2時間遮断では, 肝への門脈血流がないことによる直接の肝実質への影響はほとんどないことが推察された. 門脈遮断+門脈・体循環バイパスでは, その主たる病態は門脈領域のうっ血であり, バイパス量によって大きく影響されるものと考えられた. 2)肝動脈・門脈遮断における門脈-肝内門脈バイパスの病態生理について 1)の結果を前提にし, 肝阻血状態におけるバイパス術の有用性と安全性について明らかにするために実験を行い以下の結果を得た. (1)1)と同様にバイパス量が病態に与える影響が大きい. (2)バイパス量が小さいと肝内門脈へバイパスすることによる酸素供給ができないばかりか, かえって肝に負荷となり危険になることが推察された.
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