研究概要 |
〔方法〕近交系BNラットを移植心のドナー,F344ラットをレシピエントとする腹部異所性心移植モデルを用いた。この移植心レシピエントに、それぞれ1)免疫抑制剤なし(n=11),2)サイクロスポリン1.5mg/kg/日,(n=13),3)アザチオプリン4mg,プレドニゾロン1mg/kg/日(n=12)を筋肉内投与し、代謝ケージに収容して一日尿を採取した。移植後毎日、触診により各ラットの移植心拍動を心拒絶反応の経過としてモニターし、移植心停止(拒絶反応完了)後も7日間採尿を続けた上で犠牲死させて組織像(拒絶反応の有無及び程度)を検討した。採取した尿中のスロンボキサン【B_2】(T×【B_2】)をラジオイミュノアッセイで定量し、移植心拒絶反応の経過と対比し検討した。 〔結果〕尿中T×【B_2】は、異系心移植群においては、免疫抑制の有無とその種類にかかわらず移植心拍動の減弱及び停止の3〜4日前から基礎排泄量に比して有意に増加した。また、移植心停止後は漸減し、7日後にはほぼ基礎排泄量に復した。一方、同系心移植群(n=8)や免疫抑制剤のみの投与群(n=23)では、尿中T×【B_2】排泄量に上記の様な変動はなく一定した値に終始した。このことから、尿中T×【B_2】排泄増加に一定の診断基準を設け、各々のラットに適用して心拒絶反応の発生と対比したところ、拒絶反応の発生の診断においてセンシティビティー91〜75%、プレディクタビリティー100〜75%(免疫抑制の種類により異なる)と良好な結果を得た。 〔まとめ〕尿中T×【B_2】排泄量増加と心拒絶反応との関連が示唆され、尿中T×【B_2】排泄量のモニターにより非侵襲的に心拒絶反応を予測できる可能性が示された。この研究結果は、Transplantation volume43No3に掲載される予定である。
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