研究概要 |
加速期血流の乱流遷移時に生じる大動脈圧波形上行脚の圧低下(ΔP)をその時の流速(U)で無次元化したΔλを用いて, 市販各種人工弁の血流抵抗につき解析を行った. 現在迄に解析を行い得た人工弁の種類を下に示す. ◎Bjork-Shiley弁(23mm, 25mm, 27mm, 29mmサイズ), ◎St.Jude Medical弁(21mm, 23mm, 25mm), ◎Carpentier-Edwards生体弁(23mm). 上記人工弁により大動脈弁置換を行った21症例を対象に, Millar社製のmultisensor catheter(VPC series)を用いて, 心カラ時にΔP及びUの実測を行った. 尚Δλ(圧力損失係数の増加分)は次式により求めた Δλ=ΔP/1/2ρU^2 (ρ:血液密度) 各人工弁で得られたΔλの平均値を下に示した. ()内は症例数を示す. ◎B-S弁23mmサイズ:1.90±0.40(4), 同25mmサイズ:0.60(1), 同27mmサイズ:0.40±0.40(2), 同29mmサイズ:0(2), ◎St.Jude Medical弁21mmサイズ:0.57±0.43(6), 同23mmサイズ:0.40±0.57(3), 同25mmサイズ:0(1), ◎生体弁23mmサイズ:2.45±1.95(2). 以上の要点を下に箇条書きで示した. 1.同じ23mmサイズの比較では, 生体弁>B-S弁>SJM弁の順にΔλは高値を示した. 2.SJM弁の平均Δλ値は丁度2サイズ上のB-S弁のそれとほぼ等しかった. 3.23mm生体弁の平均Δλ値が研究対象例中最高値を示した. 4.Δλ値が0を示した人工弁の最小サイズはSJM弁が21mm, B-S弁では27mmであった. 5.25mmSJM及び29mmB-S弁のΔλ値は全例0であった. 以上, Δλの値からはSJM弁が血流の加速期に乱流遷移を起し難い, 血流抵抗の少い優れた人工弁であることが証明され, この傾向は特に小さな口径サイズの人工弁において著明であった.
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