研究概要 |
ラット脳組織および脳腫瘍細胞からDNAを抽出し、制限酵素HindIIIとHaeIIIで切断された167bdの断片をプローベとして用い、DNA損傷の有無を検討した。DNA損傷を鎖切断として顕在化させるために、α-^<32>P-dATP標識断片とPiperidimeおよびM.luteus抽出液を反応させ、8%polyacrylamide-50% urea gelで泳動して、オートラジオグラフィを作成し、Maxam&Gilbert法の塩基特異的部分分解と塩基配列を対応させた。ラット脳腫瘍組織および脳腫瘍細胞の塩基配列はrat satelliteDNA Iとほぼ一致した。若年(生後1カ月以内)および老齢ラット(生後約1年)の脳組織では特異的なDNA損傷が見られず、また、piperidineによるAp/Au(apurinic/apyrimidinic)sites,M.luteus抽出液の硫安分画による種々の修飾および損傷DNA部位の解析からも、DNA損傷は検出されなかった。手術時に得られたグリオーマからDNAを抽出し、EcoRIとEcoRI^*で切断される92bdと250bd断片を用いて検討した。脳腫瘍細胞のα-DNA塩基配列は相同性を保ち、特異的なDNA鎖切断が検出されず、グリオーマにおいてこの方法で検出されるDNA損傷は少ないが、損傷が修復されるものと推定された。この研究で用いた高頻度反復DNA断片は均一で、塩基配列に相同性があり、抗癌剤の作用点の解明に応用した。ACNUおよびMCNUはguanineの位置に一致して鎖切断を起こし、piperidine処理で増強されるため、Ap/Au sites,alkali-labile sitesの存在が推定された。bleomycinはguanine-cytosineおよびguanine-thymine配列で、neocarzinostatinではthymineとadenineで主にDNAを損傷した。
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