研究概要 |
研究者は以前より三叉神経誘発電位の研究も行ってきたが、本研究期間にはまず、従来の方法を総合的に見なおすことより始めた。刺激電極については従来のものと原理は同じであるが、全体をアクリル樹脂に変更し接触子はフェルトとした。これにより従来のものと比較し、さらに接触抵抗を小さくすることが可能となり、刺激時の痛みのより少い電極となった。しかし現在使用しているアクリル樹脂製の電極は時として生理的食塩水による極間の短絡が起るので、今後の方向として撥水性の強いテフロン樹脂を電極に使用すべく試作中である。また、刺激時の痛みをさらに軽減する方法として表面麻酔剤の使用も検討している。本法にて得られた波形に見られる4つの頂点、【N_(12)】,【P_(19)】,【N_(29)】,【P_(42)】についてその頭皮上分布を検討するために、正常人を用いて三叉神経,正中神経,脛骨神経のSEPを求めコンピューターを用い二次元脳電図を描いた。その結果【N_(12)】-【P_(19)】は対応する正中神経SEPより側頭部寄りに分布し、第一次感覚領野の解剖学的位置関係と矛盾しなかった。【N_(29)】-【P_(42)】は【N_(12)】-【P_(19)】よりやや前方内側寄りに分布し、運動領野との関連が示唆された。同様の点について三叉神経の各分枝間の差を検討したが、刺激アーチファクトが大きいこと、頭皮上の小さな範囲に多数の電極を装着するのが困難なことにより、充分な解析は今だ実現してないが、【N_(12)】-【P_(19)】は中心溝より後、【N_(29)】-【P_(42)】は中心溝より前に分布している結果を得た。臨床応用については種々の例で本法を行い検討した。小脳橋角部腫瘍では三叉神経鞘腫とその他の腫瘍の鑑別に有用であった。三叉神経痛は4例について検討したが、2例ではほぼ正常所見であり、他の2例は刺激による痛みのために記録が不可能であった。三叉神経痛に対してはさらに痛みの少い刺激法を用いる必要がある。今迄の方法をさらに改良すると共に、電磁誘導による刺激法も今後併せて検討していく予定である。
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