研究概要 |
本研究により達成できた研究実績について以下に述べる. 1.悪性脳腫瘍未治療例における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のphenotypeおよび自己腫瘍細胞に対する細胞障害活性の検討 未治療患者7症例の手術時摘出組織を用いて免疫組織化学的方法により, TILのphenotypeを検討した. TILは, Tリンパ球が主体, Bリンパ球は極少数であった. Tリンパ球亜群の検索ではC/S,H/Tリンパ球の両者が混在し浸潤していた. 未治療患者8例の手術時摘出組織より不連続密度勾配法にてTILを分離し, 自己腫瘍細胞に対する細胞障害活性を^<51>Cr release assayにより検討した. 分離リンパ球は, Tリンパ球が主体であり, Bリンパ球は極少数であった. Tリンパ球亜群の検索ではC/S,H/T Tリンパ球の両者が認められた. TILの細胞障害活性は4例に認められ3.2%-24.0%であった. 2.悪性脳腫瘍内OK-432局所投与例での検討 7症例に, OK-432を局所投与し投与後の組織変化を経時的に検討した. 局所投与後3日および7日目の組織ではOmmaya's tube周囲1-2cmの腫瘍組織は凝固壊死に陥り, 著明なTリンパ球, 多核白血球, マクロファージの浸潤を認めた. 局所投与後14日目の組織では, 凝固壊死巣と多数のTリンパ球浸潤を認めた. Tリンパ球亜群はいずれの時期においてもC/S,H/T Tリンパ球の両者が多数混在し浸潤していた. 10症例に対し, TILの細胞障害活性を経時的に検討した. 分離リンパ球はTリンパ球が主体であった. 局所投与後3日では4例全例でTILの細胞障害活性を認め2.4%-5.9%であった. 7日目では2例中1例に12.0%の細胞障害活性を認めた. 14日目では, 4例中3例に2.8%-20.4%の細胞障害活性を認めた. 以上より, OK-432を腫瘍内局所投与すると3日目で腫瘍組織は凝固壊死に陥り, 細胞障害活性を持つ多くのTリンパ球浸潤の誘導が示唆された.
|