研究概要 |
ヒトグリオーマに対する温熱療法でも、正常脳組織への障害をいかに抑えて、最大の腫瘍増殖抑制効果を得るかが重要な課題である。そこで、当部門にて樹立されたヒトグリオーマ由来のNP-1,2,3,ヒト髄芽種由来のMN-1と、正常ヒト胎児脳細胞HFBを用い、温度感受性について検討した。すべて対数増殖期に温水にて加温し(day0),1,3,5,7日に生細胞数を算定し、推移をみた。 至適加温条件の検討;NP-3とHFBを用い、42℃60分,44℃30分,60分,45℃30分,46℃30分加温した。温度上昇に伴い、双方とも増殖抑制効果がみられた。46℃30分ではNP-3で著明な殺細胞効果がみられ、生細胞数が減少したのに対し、HFBでほぼ横ばい状態であった。 グリオーマ細胞株間での殺細胞効果の検討;46℃30分加温にて行った。MN-1<<NP-1<NP-3<NP-2と殺細胞効果が上昇した。植え込み数を変えても効果は同様であった。生細胞数の推移をみると、MN-1はday1、3でもわずかな殺細胞効果がみられたにすぎなかった。一方、NP群はいずれもday5まで効果がみられた。37℃の増殖曲線から平均倍加時間はMN-1>NP-1>NP-3>NP-2と短くなっていた。 加温による形態変化;NP群では、加温直後よりday5まで、著明な細胞膜の退縮,変性,さらに細胞死の過程が観察された。 まとめ;1.46℃30分加温で、HFBの増殖曲線がほぼ横ばいであるのに対し、ヒトグリオーマ細胞株では著明殺細胞効果がみられ、これは5日間持続した。2.殺細胞効果は増殖能の高い細胞株程強い。3.グリオーマ細胞群と髄芽腫由来株の殺細胞効果の差が、培養下での増殖能の差によるものか腫瘍発生母地の差によるものか、などについては、今後さらに検討すべき課題と思われた。
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