研究概要 |
チタン繊維金属を脊髄固定に対する生体材料として応用を行うために, その素材特性について評価する意味での基礎的検討を種々の実験により行った本材料は経250μmの純チタン製のワイヤー1本を編み上げて網状にした後, 成形・焼結して作製する. 素材表面には多数の細孔を有し, この細孔中への骨侵入を期待するものであるが, 素材の気孔率を50%とした試料では50〜450μmの細孔径を得, 骨侵入に対し有効な細孔を得ることができた. 圧縮試験による力学的特性の評価では, 腰椎の破壊荷重の7倍以上の破壊強度を有しながら, 海綿骨の圧縮弾性率に近い特性を示し, 更に, 低荷重域での負荷・除荷では可逆的な歪みを示した. 更に, 従来報告されてきた方法であるkinkingによって作製したものよりも形態的, 力学的に安定した特性が得られる事が示された. また繰り返し荷重試験では, 椎体破壊の約3倍の荷重を107回繰り返し負荷しても, 素材の永久変形は2%前後であり, 人体における荷重に対して安定した素材であることが推測された. 次に生体との組織学的, 生体力学的結合を検討するために雑種成犬を用いた腰椎椎体への移植を行った. その結果, 組織学的には成熟した骨の侵入が観察され, 移植後24週では, 最大2.12mmの深さに達していることが観察され, 良好な生物学的結合が観察された. また移植後4週の生体材料のpush-out試験では, 骨-生体材料接触面の剪断応力は0.79MPaであった. 以上の実験結果より, チタン繊維金属生体材料は脊椎固定術に対する生体材料として, 従来の素材に比べて優れた力学的特性と生体結合性を有しており, 今後, 脊椎疾患に対する素材として充分に臨床応用が可能であると考えられた.
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