研究概要 |
1.Digitimer180とDISA1500による経頭蓄的大脳皮質刺激(TCS)による運動電位(MEP)の比較: 前者による頚髄部からの脊髄電位の導出はアーチファクトが大きく, 後者を改良することによって安定した電位を得ることができた. 2.術中, 導出電極固定装置の試作:ステンレス棒で枠を組み, ボールジョイントクランプを固定する装置を作った. これは脊髄・末梢神経神経束・神経根からの電位の導出に非常に役立った. 3.TCSによる脊髄・神経根・末梢神経MEPの関係:臨床的な検討の結果, 脊髄MEPの波形は末梢神経MEPの出現の有無では変化しない. 大きく影響するのは麻酔深度で, 深いと末梢神経MEPは出現しない. 神経根MEPは不安定であり, 引きぬき損傷の診断には, 神経根刺激による脊髄SEP, SC_2-SEP_2C_<1/2>刺激の神経根電位が役立つ. 4.脊髄横断面上硬膜周囲における8チャンネル同時導出脊髄誘発電位:本電位を脊髄腫瘍5例で導出し, TCSの刺激様式で左右の電位の出現, 振幅が異なることが判明し, 双極刺激では脊髄の前方, 側方で最も振幅が高いことが判明した. さらにこの方式を髄内腫瘍の摘出時, モニタリングに応用し有用であったことから, 脊髄下行路の客観的評価に役立つと判断された. 5.TCSの安全性の問題:ネコのTCSにおいて(経内板的), 内板の厚さ(0.4mm), 90μc/phでは脳血液開門(BBB)の破綻を生じるが, SEPに変化はみられない. 180μc/phとなれば, SEPの陰性成分の消失を生じるが, なお可逆性であった. しかし, 450μc/phになると, 血管内凝固・出血を生じ, BBBは不可逆性となったが, 一旦, 平坦化したSEPはまた元に復した. しかし, この刺激量で内板の厚さを2mm(ヒトの内板の厚さ)にすれば, BBBの破綻はみられなかった. ヒトにおいては, 最大98mc/phであるため, 安全であると結論された. これまで136例のTCSで合併症はない.
|