研究概要 |
我々のこれまでの研究により, 慢性関節リウマチでは滑膜および末梢血リンパ球β受容体数の減少がみられ, β受容体標本と^3H-dihydroalprenololとの結合に対する患者血清の影響を検討すると, β受容体数の減少を認めた症例のほとんどでその血清中にβ受容体結合を阻害する因子が存在することが明らかとなった. そこで, 今回の研究はその因子が自己抗体といえるかどうかより詳細な検討を行うこととし, さらに慢性関節リウマチと同様のβ受容体数の減少を示した抗原惹起型関節炎でも同じ検討を行うことにした. まずProtein A assayを行った. 膜成分と血清を室温で反応させ, 洗浄後^<125>I-Protein Aと再び反応させ放射活性を計測した. Protein AはIgGのFc部分に結合するため, 膜成分に結合したIgGを間接的に証明でき, この方法で陽性を示した症例で先のβ受容体結合阻害も陽性であれば, 自己抗体の存在が示唆される. さらにより特異性の高いImmunoprecipitation assayも行った. モルモット肺の膜成分を3H-norepinephrineとともにUVランプ下に反応させ(photoaffinity labelling), 共有結合させた後可溶化し, 血清と反応させ抗ヒトIgGにより沈降させ放射活性を計測した. Protein A assayの結果は, 10人の正常人の平均を100として標準偏差以上の増加を陽性とした. すると25例の慢性関節リウマチ患者のうちβ受容体結合に対する阻害を示した15例で全て陽性を示した. Immunoprecipitation assayは, 正常人の平均に対する増加率で標準偏差以上を陽性とすると, Protein A assay陽性例と同一の15例で陽性を示した. これらのことから, 陽性関節リウマチ患者におけるβ受容体数の低下はβ受容体に対する自己抗体によって引き起こされている可能性が示唆された. しかし, 抗原惹起型関節炎では同様の検討にて自己抗体の存在は認めなかった.
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