研究概要 |
脊髄クモ膜下腔投与薬の脊髄に帯する安全性を検討するために, 麻酔・人工呼吸下のイヌにおいて, 水素ガスクリアランス法を用いて, 局所の脊髄血流量(SCBF)を脳血流量(CBF)と同時測定した. (1)局所麻酔薬テトラカイン 5mgの脊髄クモ膜下腔投与(it)は, 動脈圧を有意に低下させたが, SCBF・CBFには著明な影響を与えなかった. エピネフリン 100, 300, 500μgのitも, SCBFに一定の影響を与えず, またCBFも一定していた. (2)テトラカインによる脊髄麻酔下で, SCBFのautoregulationが存在するか否かを, 検討するために, 脱血と炭酸ガス吸入によるSCBFの反応性を検討した. 呼吸性アシドーシスに対するSCBFの反応性は維持されているが, 脱血による低血圧ではSCBFは減少し, autoregulationは部分的に障害されていると推測された. (3)拮抗性鎮痛薬, ブトファノールは, 静注およびitでもSCBFに有意な影響を及ぼさず, 静注ではCMRO_2のも減少し, これはナロキソンによって拮抗された. (4)プロスタグランシンI_1誘導体(OP-41483)の静注は, SCBF, CBFをともに15%増加させたが, itでは, ともに影響しなかった. (5)塩酸クロニジンのitは, SCBF, CBFに対して著明な影響を与えなかった. これらの結果は, 現在臨床で脊髄クモ膜下, あるいは硬膜外で使用されている, テトラカイン, エピネフリン, クロニジン, ブトファノールは, SCBFに著明な影響を与えず, 安全に使用されることを示している. (1)の結果は, 最近のCrosbyG(アメリカ), Kozody R(カナダ)との結果と一致し, (5)の結果は, Gordhら(スエーデン), CrosbyR(アメリカ)の報告と一致する.
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