研究概要 |
人の肝臓, 消化菅とカテコラミン抱合型の研究では, 肝, 胃および結腸組織切片が得られる予定手術患者55名を対象とした. 無作為にドパミン(DA)投与群とDA非投与群の2群に分け, それぞれの組織内DAとノルエピネフリン(NE)の抱合型を測定し, 肝臓消化菅とカテコラミン(CA)抱合型の関係について検討を加えた. DA非投与群の肝, 胃粘膜および結腸粘膜内にはNE抱合型とDA抱合型ともに検出できた. DA投与群の肝では肝と血漿にDAとDA抱合型が著明に増加し, 消化菅では筋層より粘膜においてDA抱合型が高値を示した. 以上の成績から, 肝や消化菅などの腹腔内蔵器はCAの取り込みとCA抱合型の生合成に重要な役割を果たしていることが示唆された. 雑種成犬に対してDAのprodrugであるTA-8704(N-(N-Acetyl-L-methionyl)-O,O-bis(ethory-carbonyl)dopamine(以下TA)を経口投与し, 血中CA濃度の推移, 尿中, 胆汁中への排泄および肝, 腎, 小腸, 胃組織内の抱合型, 遊離型CA濃度について調べた. 血中NE, DA濃度は有意に上昇したが, 1時間後に最高値を示し, 2時間後でも前値に比較して有意であった. 尿中では, NEとDAがTA非投与犬に比して, TA投与犬で遊離型抱合型とも有意に上昇した. 胆汁中ではTA投与犬でDA濃度が遊離型抱合型ともに有意に上昇した. すべての組織でCA濃度はTA投与により上昇したが, 腎ではDA濃度が遊離型抱合型ともに他臓器に比較して著明な上昇度を示した. これは腎がCAの排出に深く関与しているためと思われる. また胃では抱合型DAの上昇が特に著しく, TAが吸収された直後にDAとなり, すぐに抱合されていることを示唆する. また肝では他臓器に比し, 遊離型抱合型ともにNE濃度の上昇が著明であり, 肝がNEの取り込み, 生合成等に深く関与していることが示唆された.
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