研究概要 |
フローサイトメトリーを用いた短期間で評価可能な抗癌剤の感受性試験の開発を試みた. フローサイトメーターの故障整備の遅れのため研究は当初の予定より大幅に遅れたが, 以下のことが明らかになった. 1:泌尿器科悪性腫瘍のprimary cultureは, 腎, 膀胱, 睾丸の腫瘍については機械的分散を行い, 培地にRPMI-1640+10%胎児牛血清を用いることで比較的安定して行える. この際に線維芽細胞の混入が問題となる. 2:抗癌剤としてAdriamecin, Cisplatinを用いたが, その効果による細胞形態の変化は核の崩壊ないし核の濃縮として認められ, いずれも24時間以内に認められる. 3:フローサイトメトリーで測定した抗癌剤によるDNAヒストグラムの変化は細胞形態の変化より早期に起きているが, 腎, 膀胱腫瘍では一つの腫瘍がDNA量のことなる複数のクローンよりなるDNA polyploidyを示すことが少なくないことが明らかとなり, そのために, 単クローンのヒストグラムについての解析プログラムしか無い現状では, 実際に定量的な細胞動態の解析のできるものが限られるという結果であった. そのため, 抗BrdU抗体を用いた細胞動態解析も必要であるということで, 現在, その至適測定条件を検討中である. 4:ルミノフォトメーターを用いたATP量の測定は, 1×10^4個というごく少数の細胞で可能であり, トリパンブルーを用いたviability判定と良く相関した. 本法は簡便でかつ短時間で行えるという利点を合わせ持っている. 今回の研究では, フローサイトメーターの故障に加え整備に長期間を要したため, 初期の目的であるDNAヒストグラム, 細胞動態, 細胞形態上の細胞死に至るまでの変化を同時に比較しながら明らかにし, 抗癌剤の感受性試験への応用を行うところまではできなかったが, 今後も本研究を継続し, 本感受性試験を完成させたい.
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