研究概要 |
勃起の主体をなすのは陰茎海綿体なので, ここでは主に陰茎海綿体の血管構築について述べることにする. イヌ:陰茎深動脈は陰茎背動脈より分れるとすぐに2〜5本に分枝し陰茎脚の背面より海綿体の中へ入っていた. 陰茎深動脈は海綿体の中でさらに分枝して螺行動脈となり海綿体洞へ連っていた. 螺行動脈が海綿体洞へ近づくにつれてポルスターが現われた. ポルスターは海綿体洞へ流入する血液量を調節しているとされている. 海綿体洞は互に連絡していた. 海綿体洞を去る静脈は陰茎脚の海綿体洞の表面より起り(海綿体後小静脈), 海綿体洞の表面を這うように走った後互に合流し, 向きをほぼ直角に変えて去っていた(貫通静脈). これらの静脈は勃起に際して白膜と海綿体洞との間で圧平されることを示唆している. 圧平により勃起時静脈血の流出が阻害されることは塩酸パペベリンの海綿体洞への注入による実験で明らかにされた. また, 動脈系も体循環から遮断され, それにより非常に高い海綿体洞圧が維持されることが判明した. なお, バイパスは観察されなかった. サル:サル陰茎海綿体の血管構築はイヌのそれと基本的には同じであった. イヌ陰茎海綿体と異る点は, 左右の陰茎海綿体が脚部より遠位では互に癒合していることであった. ヒト:陰茎海綿体はサルと同じく遠位では互に癒合していた. 海綿体洞はイヌおよびサルに比し小さかった. 螺行動脈にはポルスターは存在していなかったが, 螺行動脈壁は肥厚していた. 海綿体洞を去る静脈はイヌおよびサルで観察された所見と同じであった. 動脈系については現在検索中である. 支配神経についてはイヌにおいてはポルスターを有する部位の螺行動脈にVLP含角神経線維が密に分布している所見を得たが, その他の神経線維に関しては現在なお検索中である.
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