研究概要 |
1.尿路感染菌(臨床分離株)の背景因子とMIC, hydrophobicityとの関連:過去7年間の保存株の検討により留置カテーテルに関連して出現する菌種はセラチア菌, 緑膿菌であり, 尿路感染菌として頻度の高い大腸菌はほとんど認めなかった. セラチア菌では抗菌剤の局所投与によりMIC値の上昇が認められた. 緑膿菌についてhydrophobicityを検討すると大部分が親水性であった. 2.離床分離株の尿路カテーテル材料に対する付着実験:(1)ガンジダに関する研究;シリコンおよびラテックスに対するカンジダアルビカンスの付着数をin vitroで検討すると, ラテックスに有意に多く付着した. この機構を解析するために疎水性のカンジダトロピカリスを対照として疎水結合の関与を検討した. その結果カンジダとカテーテル材料との間の付着には疎水結合の関与が大であることが判明した. (2)セラチア菌および緑膿菌に関する研究:シリコンおよびラテックスに対する両菌種の付着数をin vitroで測定した. 両菌種とも時間の経過とともに付着菌は増加したが, シリコンよりもラテックスに有意に多く付着した. またシリコン, ラテックスのいずれにおいても緑膿菌のほうが有意に多い付着菌数であった. 3.付着阻害物質添加によるin vitroでの付着実験:付着を除去しうる薬剤として, 抗菌剤, 表面活性剤, キレード剤などで除去効果を検討した. その結果表面活性作用とキレート作用を併せ持つアシル化フェニルアラニンがカンジダに対して著名な除去効果をしめした. また緑膿菌ではシリコンで, セラチア菌ではシリコン, ラテックスいずれにおいてもアシル化フェニルアラニンは除去効果を有することを認めた. 実際の患者からのカテーテルを使用した実験でも, 肉眼的, 電顕的にアシル化フェニルアラニンはすぐれた除去効果を示した.
|