研究概要 |
1.前立腺に存在する成長因子: これまでの研究によって前立腺にはi)酸性の線維芽細胞成長因子(aFGF), ii)塩基性FGF(bFGF), iii)正常型のヘパリン低親和性成長因子(nLOA), およびiv)癌型で骨芽細胞成長因子活性の強いヘパリン低親和性因子(osteoblast GF)の少なくとも四種の成長因子が存在することが明らかとなった. 2.成長因子の前立腺における役割: 上記四種の成長因子の前立腺における役割を知るために, 前立腺上皮細胞の初代培養系を確立した. この初代培養系を用いて調べると, aFGF及びbFGFには細胞増殖促進効果は認められず, nLOAが最も顕著な細胞増殖促進作用を示すことが明らかとなった. 一方, ヒトの良性肥大前立腺にはbFGFが多量存在し, 前立腺癌にはこれに加えてaFGFも存在すること, これらはいずれも男性ホルモン依存型と非存型に区別されることも明らかにしていえる. 従って, bFGFはその血管造成作用と線維芽細胞成長活性から, 前立腺の間質の増殖に関与し, "良性"の成長因子であると考えられる. また, aFGFとosteoblast GFは"悪性"の成長因子であると推察される. 3.今後の課題: 以下の点が今後の課題として重要である. i)上記成長因子の完全精製と抗体作製, ii)これら成長因子, 特に"悪性"型の遺伝子発現とその調節機構, 並びに発癌遺伝子産物との関連.
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