研究概要 |
上記の研究課題を完隊すべく各種検討を行い下記の実績を得た. (1)癌細胞の膜特性として, 細胞膜の情報伝達機構の中心的役割を果す, リン脂質代謝の一つであるイノシトールリン脂質(PI)代謝を検討し, 癌細胞膜の新しい特性として, このPI代謝異常(代謝の異常亢進や異常代謝の産生等)が存在することを明らかにした. (2)ヒト腎癌細胞での検討ではさらに, PI代謝の異常のうち, CDP-DGと言う異常代謝物の蓄積が認められた細胞でのみがん遺伝子の一つ, C-myc遺伝子の過末発現が認められ, がん細胞の増殖とPI代謝, さらにがん遺伝子の発現機構が密接に関係していることを明らかにした. (3)異種のPIやPIアナログを用いて, リポゾームを作製し, ヒト腎癌などの癌細胞に作用させ殺細胞効果を検討した所, 大豆由来のPIリポゾームなどがヒト癌細胞に対して強い殺細胞効果を示すこと, 特にPI代謝の亢進が認められるヒト腎癌細胞に強いことが明らかになり, 上記(1)(2)での検討されたPI代謝を調節することによる癌治療への可能性が示唆された. (4)その他, 癌細胞におけるミトコンドリア膜のイオン輸送とエネルギー伝達系の異常を明らかにした. また研究に際して, ヒト腎癌より新しいヒト腎癌細胞株を樹立した. これらの研究成果は論文, 及び日本泌尿器科学会, 日本癌学会, アメリカ癌学会等で発表した.
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