研究概要 |
【目的】最近インポテンスの診断や治療に, 陰茎海綿体内にvasoactive drugを注入して勃起を起こさせる試みがなされている. しかし, その作用機序は不明な点が多く基礎的検討が必要であるので, 臨床応用確立を目的として研究を行った. 【基礎的研究】実験動物として比較的ヒトに類似しているウサギの陰茎海綿体を用い, 各種vasoactive drugに対する反応を薬理学的に検討し以下の結果をえた. (1)陰茎海綿体にはα_1およびα_2adrenoceptorが存在するが, α_1の方が優位であった. (2)papaverineは強い弛緩作用が認められた. (3)prostaglandin E_1は同様の弛緩作用が認められた. (4)Ca channel blockerであるverapamilはpapaverineと同様の弛緩作用認められた. (5)acethylcholinは低濃度でpapaverineと同等の弛緩作用が認められた. (6)β-agonistであるisoproterenolは低濃度では弛緩作用を示したが, 高濃度では逆に収縮作用を示した. (7)vasoactive intestinal polypeptide(VIP)は弛緩作用が推定されたがなお検討中である. 【臨床的研究】vasoactive drugとしてすでに臨床的に用いられ安全性が確認されているpapaverineを選んだ. インポテンスの診断ならびに治療に対する有用性を検討し, 以下の結果をえた. (1)papaverine40mg陰茎海綿体内注射が勃起機能検査として有用であり, インポテンス成因の鑑別診断に役立つことが示唆された. (2)papaverine陰茎海綿体内注射によるインポテンス治療は器質的原因によるものだけでなく心因性インポテンスに対しても有効であった. (3)陰茎海綿体灌流による人工勃起誘発と海綿体造影をpapaverine40mg陰茎海綿体内注射で完全勃起を生じないものにおこなったところ, 静脈性インポテンスの可能性が示唆された. (4)持続勃起が起こることがあり, その場合α-agonistが有効であった.
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