研究概要 |
胎盤における抗凝固蛋白については、以前報告した方法(設楽、日産婦誌36、1984)を改良し、クロマトフォーカシングを加えて高度精製を行ったところ、分子量29,000ダストン、等電点4.2〜4.4の純標品が得られた。これを用い、血液凝固機構におけるこの蛋白の抗凝固機序を検討したところ、本物質はリン脂質、【Ca^(2+)】存在下で、組織トロンボプラスチンによる凝固第X因子の活性化および洗浄血小板、【Ca^(2+)】存在下でのXa因子によるプロトロンビンの活性化現象に対し、用量依存的に抑制した。また、両反応の50%抑制は、ほぼ同一濃度の本物質の存在により認められた。さらに、リン脂質非存在下では、Xa因子によるプロトロンビン活性化抑制は認められなかった。以上より、本蛋白は、リン脂質、【Ca^(2+)】存在下での血液凝固の活性化速度の加速を抑制するものと孝えられ、凝固機構を孝えるとき、in vivpでは、凝固第X因子の活性化抑制がより重要な意義をもつものと孝えられた。次いで、得られた標品を家兎に免疫することにより抗体を得た。得られた抗体は、胎盤ホモジネートのWestern blotで特異性を示した。その抗体を利用し、胎盤での局在を検討したところ、絨毛Syncitiotrophpblast表面および基底膜、また脱落膜細胞に強く、母体側血管内皮に弱い局在を認めた。さらに、正常胎盤および妊娠中毒症胎盤のホモジネートで、本蛋白をDot法により定量したところ、妊娠中毒症胎盤で有意な高値を認めた。一方、同一ホモジネートからSalemらの方法(JBC,259,1984)に準じて、トロンボモジュリンを部分精製し、その活性を検討したところ、両者に有意差は認めなかった。これらの事実はトロンボモジュリンの作用発現がトロンビン生成後におきることを考えると抗血栓機構としての本物質の重要性を示すものと考えられる。
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