研究概要 |
目的:妊娠中毒症の原因にレニン,アンギオテンシン系の関与が推定されているがまだ不明である。そこで、妊娠中毒症妊婦のレニンの動態を活性型,不活性型レニンに分けて検討した。 方法:1)妊娠30-40週の正常妊婦(以下C群)37名,高血圧型妊娠中毒症(以下H群)9名,ネフローゼ型妊娠中毒症(以下P群)5名について、レニン活性を測定した。2)活性型レニン(PRA)はplasma 50μlにPMSFを加え、37℃,2時間incubationし、生成したアンギオテンシンIをRIAに2測定した。総レニン活性(TRA)は、plasma 160μlにトリプシン処理を行ない、そのtrypsin-actiuated plasmaをPRAと同様に測定した。不活性型レニン(IRA)は、TRAとPRAの差で表示した。 結果:TRAは、H,P,C群それぞれ、38.6±9.4,46.0±3.9,53.2±4.9でほぼ同値を示したが、PRAは、H,P,C群それぞれ、28.1±7.1,3.4±1.1,10.7±1.9でH群では有意な上昇を示し、逆にP群では低値を示した。IRA群では、C群に比しH群では有意な減少を示した。PRAのTRAに占める割合は、C群に比しH群では有意に上昇し、P群では低下した。以上のことから、妊娠高血圧の発症は、不活性型から活性型レニンへの転換機構の変化によることが示唆された。 今後の研究課題:現在、血漿中のビッグレニンには、活性型レニンと不活性型レニンの2種類があるとされている。又、分子量が変化することなく、活性化される不活性型ビッグレニンについての報告もある。これらのビッグレニンが、妊娠高血圧の発症にどのように関与しているかは極めて興味深い。現在、SephadexG100によるゲル瀘過法等により、その動態を検討中である。
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