研究概要 |
昭和61年度の研究によって胎仔子宮外保育法が胎仔の腎生理の研究に有効であることが確認されたため, ヤギ胎仔を用いて以下の実験を行い, 結果を得た. [材料と方法]胎仔子宮外保育法によって胎令122-135日のヤギ胎仔4頭を母体環境から完全に切り離した条件下で24時間以上保育した. その際, 経時的に胎仔血の採取を行い, 血漿レニン活性(PRA)及びアルドステロン(Aldo)の濃度を測定した. その結果と各時点に於ける胎仔循環条件との関係を検討した. [結果](1)個々の胎仔においてPRAとAldoとの間には有意の直線性の相関が存在する. (2)胎仔のPRAは個々の例によってその基礎レベルが異なる. (3)本実験系において臍帯動脈より挿入したカテーテル先端の位置とPRAの基礎レベルとは関係があり, 腎動脈起始部より中枢側にカテーテル先端が存在する方が末梢側の存在する場合より基礎レベルが高い傾向がある. (4)胎仔の付加した短時間の低酸素症及び高炭酸ガス血症は胎仔のPRAに影響を与えない. [考察]これまでのあらゆる胎児生理の研究方法においては, 胎児は母体という極めて安定した環境の中に存在しているため, 胎児自身の種々の条件下に於ける内分泌学的調節機構を研究する上で限界を有していた. 特にステロイド等の母児間で流通可能な物質についての分析は困難であった. 我々の実験方法においては胎児は母体環境から隔絶して存在しており, その意味でこれまでの研究では明らかとはなりえなかった問題を解決する可能性を有している. 今回の研究によって, 胎仔はPRAについて循環動態の変動(腎潅流圧の変化)に応じてそのレベルを変動させることが明らかとなった. また, 胎仔期においても, PRAとAldoの間には相関があり, 胎仔はAldoを自律的に産生していることが明らかとなった.
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