研究概要 |
受精卵の子官内膜への着床日, 妊娠成立の出発点であり, 臨床的には不妊や避妊などに直接関わりのある減少でなるが, その機序の詳細については不明の点が多い. 本研究は着床機序を主にin uitro実験系を用い, 家兎の着床明の受精卵と同時期の子宮内膜細胞との接着過程における相互作用を形態学的ならびに生化学的に観察し, 着床に必須の因子, 促進因子, 阻害因子を明らかにすることを目的とし以下の成績をえた. 1.胞胚の子宮内膜細胞への付着率, すなわちin uitro着床率は時間経過と共に上昇し24時間後から急激に高率となった. 12時間以内では低率であったが, 今後培養条件の改善により短時間での接着成立の可能性が残されているものと考えられる. 2.透明帯の菲薄化, 断裂付トロホブラストと子宮内膜の双方の作用によることがわかった. 特に子宮内膜細胞の産生する多量の透明帯融解に作用すると思われる物質の存在が明らかとなった. 現在, この物質の生化学的分析を進めている. 3.子宮内膜細胞は胞胚に接する部に著明なコラーゲン産生を伴う複数の局所的隆起構造を形成した. コラーゲン基質が培養細胞の付着, 増殖, 分化を促す事実から着床にさいしてトロホブラストの接着, 増殖を促進するために子宮内膜細胞のコラーゲン産生が亢進しているそのものと考えられた. 4.このようなin uitroの成績をin uiuoの着床部について比較検討したところ, 胞胚の子宮内膜への接着にさいし著明なコラーゲン産生を伴う子宮内幕の隆起構造が胞胚を子宮腔内に固定し, コラーゲンが胞胚と子宮内膜の接着因子として重要な役割を果していることが明らかとなり, in uitroの成果と全く一致した.
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