研究概要 |
我々は, 重症Rho(D)感作妊婦における胎児を授命し得る治療法を新たに開発する目的で, Rho(D)抗原固定免疫吸着カラムを作成し, 妊婦血中より抗Rh(-D-)抗体を選択的に除去するシステムに関して基礎的検討を行った. (1)当院に登録されているRho(D)患者の協力を得て, その赤血球を採取し, 凍結保存した. (2)Rho(D)抗原の精製を行うため, 可溶化Rho(D)抗原を定量的に則定し得るbinding inhioition assay系を確率した. Rh(-D-)患者血球では正常Rh(D)陽性者に比し, 細胞表面上で5倍, 可溶化抗原量としては10倍の増量を認めた. (3)Rho(D)患者より得た赤血球をホモゲナイザーにて破砕後, 血糖密度勾配法にて細胞膜分画を得た. 細胞膜分画を, 非イオン化界面活性剤Renex30により可溶化した. (4)可溶化Rho(D)抗原をレンチル・レクタン・カラムを用いて精製を行い, レクチン親和性分画を得た. さらに, ゲル濾過を加え, 精製した. 可溶化Rh(D)抗原活性は, binding inhioition assay系により測定した. 活性ピークを示す分画においては, 約100倍の精製が達成された. SDS-PAGEを用いた検討では, 抗原活性物質は分子量28,000〜35,000の2〜3本のmain bandとして存在した. (5)部分精製された可溶化Rh(D)抗原をSephasast 4Bカラムにカプリングを行い, Rh(D)抗原固定免疫吸着カラムを作成した. 免疫吸着カラムは, 高力価の抗体価を示す妊婦患者血清を効率よく吸収する事が可能であった. しかしながら, 本システムを臨床応用に使用するには, 更にスケールの大きい数9単位の製精抗原が必須とされる. 従って遺伝子工学技術の導入による, 大量かつ純粋な抗原の作成が必須であると考えられる. (6)その他, 妊婦時における母児間の免疫反応の相互作用についても基礎的検討を加えた.
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