研究概要 |
子宮内膜癌細胞にたいするSteroid hormone(SH)の効果発現にたいして、Steroid receptor(SR)が関与している。しかし、SH-SR複合体が形成されてもなお、効果が発現しないこともある。われわれは、細胞質内ERが2.52fmol/μg・DNA、核内PgRが0.26fmol/μg・DNAであったが、核内ERおよび細胞質内PgRが陰性の分化型子宮内膜癌(Ishikawa,西田 1980)を用いて、RNAase処理後のDNA量とDNase処理RNA量をComputor連動FCMで測定した。その結果、Histogram上【E_2】、DES投与では変化が乏しかったにもかかわらず、P,MPA投与により、顕著なploidy reductionを認め、RNA量の減少をも認めた。しかも、【^3H】-【E_2】および【^3H】-MPAを添加した実験細胞のTdR-TEM検索においては、【^3H】-【E_2】の銀粒子の核内散在性結合を、【^3H】-MPA添加では、小数の銀粒子の核内転位を認めた。そこで、細胞周期同調剤であるSodium butyrate(SB)を加えて、SR〓活効果を検討した結果、細胞質内ERが5.94fmol/μg・DNA、核内ERが12.35fmol/μg・DNAと増加した。今回、さらにSBによる核内SRの誘導について検討するべく、SBを1,3,5mM濃度に調整し実験細胞に添加し増殖能におよぼす影響、さらに細胞周期に与える変化を増殖曲線とFCM解析より詳細に検討し以下の結果を加えた。(1)SB3mM,5mM濃度添加群では72時間後まで強い増殖抑制が認められ72時間後では3mMで対照群の28.2%,5mMで15.5%まで抑制された。1mM添加群では48時間まで抑制が持続したが72時間後では軽減した。(2)細胞周期に与える変化をみると、SB3mM添加48時間後に最も強いG,期同調が認められ、このときS期細胞数は減少したが、【G(_2^+)】M期に変化はなかった。1mM,5mM濃度のSBには軽度の同調効果があった。この結果、増殖能、細胞周期同調の点から、SBの内膜癌細胞にたいする効果は1mM濃度添加がSR誘導に最も適していることが明らかになった。
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